あとがき


 この度は、僕の三作目となります、「名も無き英雄」をお読みいただきありがとうございました!


 今回は、物語の構想をいくつか考えているうちに、「剣と魔法のファンタジー」の構想が膨らんできまして、それを短編としてまとめてみました。

 「剣と魔法のファンタジー」は、僕の場合だとゲームでたくさん触れてきた世界観ですし、ファンタジーの王道とも言えるのではないかなと思います。


 さて、この手のファンタジーだと、「勇者がいて」「ラスボスがいて」「長く苦しい旅の末に悪を打ち砕く」の流れが基本だと思います。

 ただ、その過程の全てを短編ではまとめられないですし、長編にするほど僕の執筆力は無いと思いますので、今回は勇者一団の旅の一幕だけを切り取ってみました。


 今回、意識してみた点は三点です。


 一点目ですが、物語の視点を勇者目線ではなく、勇者が訪れた関所の親方視線で書いてみました。この世界における主人公は間違いなく勇者であるアイルやその一団なのですが、あえて脇役の視点で書くことで、勇者と邪神の争いに巻き込まれる側の心理を書いてみたいなと。

 親方の一人称で書くことが決まった段階で、二通りのラストがありました。一つは、勇者達の活躍により、犠牲者は誰も出ずに大団円。もう一つは、主人公が身代わりになって勇者達を助ける。前者の方が悲しみの無いラストですが、後者のほうがリアルなのでは? と、色々と悩んだのですが、最終的に後者を採用しました。

 主人公が身代わりになるのであれば、そうする必然性が必要です。主人公達を本物の勇者と認めるだけでなく、自分を犠牲にしてでも助けたい。そう思わなければ身代わりになんてなりません。

 勇者達とのやり取りによって、最初は信仰心の弱かった親方が、最終的に神に祈るまでに至る。その心理の変化がうまく表現できていたら嬉しいです。


 二点目に、勇者一行のキャラ設定ですが、伝説の勇者や、生まれながらに運命付けられた少女であるからと言って、当の本人達がそれをすんなり受け入れて過酷な運命に身を投じるだろうか? という疑問がありました。
 むしろ、最初は抗いつつもその境遇に翻弄されていく内に、少しずつ運命を受け入れ、本当の勇者になっていくのではないかと。

 今回の物語の時点では、まだ旅は始まったばかりなので、勇者一行にその自覚はありません。

 アイルとフィルの村が滅びた時の話や、ミスティ加入の話、ベアトリクス加入の話、後に勇者達が力を目覚めさせていく話など、今回の物語を薄くさせないために、割とちゃんとその辺の構想も固めました。今後作品としてアップするかどうかは分かりませんが……。


 三点目として、勇者達が現れることによって巻き込まれる人々です。

 何も勇者や高名な人物であるからと言って、無条件で人々に受け入れられるなんて事はないはずですし、結果的に恨まれる事もあるはずです。
 もちろん、勇者側だって自分達が良からぬものを寄せてしまうことは理解しているでしょうし、無関係な人々を巻き込まないように気を付けていても、やはり完璧ではないでしょう。
 仮に勇者達が最終的に世界を救ったとしても、その過程で巻き込まれた人々の傷や悲しみは癒えません。そういう人々を書くことで、物語にリアリティや深みを持たせられないかなと。


 あ、それと、ドラゴンの非道さはあえて強調してみました。

 邪神側の使いであるドラゴンは、今回「勇者の亡骸を持ち帰る」という目的のために来ているので、人間側と面倒なやり取りなんてしません。対応が面倒だと思ったら問答無用で暴力を振るい、自分の要求のみ押し通す。それくらいの方が悪役らしいですし、有無を言わせぬ恐怖感が出せるのではないかなと思いました。


 今回の作品は、短編というにはちょっと長くなってしまった感じですが、それなりに綺麗にまとめられたのではないかと思います。


 それでは今回はこの辺で。

 また次回作でお会いいたしましょう!



「小説を書いてみる」トップへ