あとがき

 僕の処女作になります「DEA型の染み」、お読みいただきありがとうございました。

 あとがきとしまして、この作品を書いた上でいろいろ発見したことや、反省点なんかをつらつらと書いてみたいと思います。

 まず最初に種明かしですが、この作品の主人公である「一郎」は人間ではなく、「陽子」の飼い犬です。タイトルにある「DEA型」というのは犬の血液型を分類する時に使用する用語です。

 今回はご投稿いただいたお題の中から「動物の主人公」と「意外な結末」の二つを使用して書いてみました。というか、最終的にその二つになったという感じです。最初にお題を決めて書き始めるということがいかに難しいかを痛感しました。皆さんからお題を募集して書いていくというスタイルを、根本的に見直す必要があるような気がしなくもありません(^^;

 主人公を「犬」にして、それを決定付ける描写は最後の一行だけにしよう。というのが最初に決まったことでした。

 後はいかにして一郎が人ではないことを隠していくかという点だったのですが、それが上手くできていたかどうかは読み手の皆さんに判断を委ねたいと思います。

 できる限り「一郎が人でないとあり得ない描写」を避けて書いたつもりです。例えば、作中で一郎が吹き出し付きで日本語を喋り、実は一郎は「そう言ったつもり」で、実際は「ワンワン」でした。なんてことをしないように意識しました。そのせいで、一郎と陽子のやりとりに違和感を感じていた方は多かったと思います。違和感だけを感じさせ、最終的に「そうだったのか!」と思わせることができていたら、僕はPCの前でニヤリとほくそ笑むことでしょう(笑)

 もう一点、一郎が犬だったために苦労した点は「左腕」とい単語が使えないということでした。人で言う左腕は犬で言うところの「左前足」ですし、これは最後に一郎が犬だったことをバラすために使う単語だったので、作中に書くわけにもいきません。上記の吹き出し同様、作中で左腕と描写したけども実は前足でした。なんてことをしない為にも、だいぶ無理のある表現になってしまったような気がします。


 ストーリーに関係の無い点ですと、場面の緩急を表現する技法を一つ掴んだような気がします。

 ゆったりとした場面では、比喩表現を多めに使うことで場面の進行の速度を遅くさせることができるような気がします。逆に、緊迫した場面等では、比喩表現を一切使わず、ストレートな表現のみにすることでスピード感を出すことができるような気がしました。

 最初に一郎が陽子に起こされるシーンや缶コーヒーを買いにいくシーンと、陽子が家に逃げ帰ってくるシーンやストーカーに襲われるシーンでは状況説明の描写に差を付けたつもりです。その違いが、読み手の方に異なる雰囲気を与えることができていたら嬉しいです。


 それと、これは企画の初期の段階でたくさんいただいていたアドバイスなのですが、登場人物の会話だけで物語が進んでいくということがないように意識しました。
 もちろん、一郎は犬なのでそもそも会話ができないのですが、一郎が陽子から聞いた、追われている時の状況や、犯人逮捕の状況等は敢えて会話にしませんでした。
 逆に、ストーリーには直接関係のない陽子の独り言や一郎へかける声等は、陽子のキャラクター付けの意味合いもかねて多めにしたつもりです。


 全体を通してのストーリーはよくあるものだと思うので、今度はストーリー進行そのものにギミックを仕掛けてみたいなと思います。それができるのがいつになるのかは分かりませんが(笑)


 それでは、今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございました!


 ※追記
  オチがあまりにも分かりづらかったようなので、最後の一文をもうちょっとちゃんと伝わるように書き換えました。
  一度アップした作品に手を加えるのは邪道かと思うのですが、僕の表現力の未熟さ故、ご容赦ください。
  書き換える前の最後の一文は以下の通りでした。
  「怪我に近い左前足を庇いながら、俺は陽子と共に帰路についた。」

  確かにこれだけでは分かり辛いですね。し、精進します!



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